愛情のエッセンス

以前に経営していた塾での話。遠征イベントの帰り道に、隣の市の某大手ハンバーガー店で参加者と食事中に、向かいの席の生徒が唐突に、「先生、ここのハンバーガーおいしくない」と言い出したことがありました。私は思わず、「チェーン店なのだから、味はどこも同じはず」と返しましたが、その子は頑として承知しない。他の生徒まで「確かに、三田店の方がおいしい」などと言い出す始末…。その後、気になって作り方を調べたのですが、やはり全国のどの店も同じマニュアル通りに調理しているらしく、結局、その原因究明は迷宮入りに…。

ところが昨年の上海冬期五輪で、“ロボットが100%調理した選手村の料理がおいしくない”という報道を知って、何か手がかりをつかめたような気がします。その前の年の東京五輪では、日本の人が調理した選手村の料理が世界中の選手から「最高においしい!」と称賛されたのに、レシピに完全忠実にロボットが作った料理は悪評を受けた理由。そして、隣市のハンバーガーがおいしくない理由。それは、一番大事な『愛情のエッセンス』が欠けていたということではないでしょうか? 料理を、科学や素材の力だけで片付けてはいけません。有り合わせの具材でも、『おふくろの味』は最高にうまかった! 教育も同じであると、私は考えています。